いにしえの時代。 神が天地を創りたもうた時代。 その頃の天地(HTML)を我物顔で闊歩する神々(タグ)は、現在とは違う顔ぶれだった。 近代において天地創造(レイアウト)を担うのは新興宗教「CSS教」だ。しかし、当時は、今となっては邪教として忌み嫌われるTABLE神(タグ)が天地創造(レイアウト)を支配していた。 「table tr td‥‥tr td td td‥‥」不思議な呪文を唱えると、大地が二つに割れ、さらに幾つにも複雑に引き裂かれ、新しい大陸が生まれた。それぞれの大陸に神々(タグ)が送り込まれ、その中で大地の開墾が行われた。現在のCSS教が「border-radius‥‥」という呪文で一発で作りだす角丸地形も、複数の大陸に分裂したIMG神たちを再結合させることで、強引に創造した。 しかし、そのたびに大陸間では戦争が勃発し、神の下僕たち(Webクリエイター)に大量の犠牲者を出すことになった。 そんなTABLE神の圧政が続く中、業を煮やした神の下僕たち(Webクリエイター)はIMG神の元に助けを求めに来た。 「それぞれのIMG神様の方針が違うことはよくわかりました。その方針のズレをどうにかして調整できないものでしょうか? このままでは我々はTABLE神にいつまでも支配されてしまいます」 IMG神は目を閉じ、深く頷く。 「それには一つだけ解決の方法がある。ただし、そのことは我々IMG神にとって屈辱的なものなので、簡単にはいかぬぞ。IMGの祠(Photoshop)に行き、自らその方法を導きだすのじゃ」 神の下僕たちは祠(Photoshop)に行き、そこでその答えを知る。なんとそこには視覚的効果を司るIMG神としてはあるまじき状態、つまりいっさい眼に見えないIMG神(透過部分のみのGIF)を創造する魔の経典(バッドノウハウ)があったのだ。 藁をもすがる思いの神の下僕たちは、その禁断の経典に手を出し、不可視IMG神「spacer.gif」を生み出した。 その不可視IMG神「spacer.gif」は、IMG神でありながら見ることができない(もしくは背景色に同化する)ので、あらゆるTABLE神の創りだした大陸の中に潜みこむことができ、その大陸のスケールを自由自在にコントロールし、IMG神同士の抗争の調停役となった。 当時の神の下僕たちは魔の経典(バッドノウハウ)であることを恐れず、事あるごとに不可視IMG神「spacer.gif」に助けを求め、数々の戦争を乗り越え、一時的な平穏を享受した。 やがて時代は変わり、光の宗教(Flash)の時代を経て、CSS教が世に広まることになった。すると、不可視IMG神「spacer.gif」を信仰する派閥は改宗を迫られた。そして、もはやほとんどの人が「spacer.gif」の存在すら忘却の彼方へと追いやってしまった。当時はあれほど乱用した経典に再び手をかけるものはいなくなった。 —— しかし —— 現代でもあなたがIMG神千里眼術器(イメージ検索)にて「spacer.gif」召喚を試みれば、当時の遺跡の中に残る彼らの姿を見ることができる。彼らは当時とまったく変わらない姿で、そこに息づいているのである。 けっして滅びることなく、いまだに風化した大陸を支え続ける不可視IMG神。その姿に、昔信仰したことのある者は、ある種の感動を禁じえないのである。 不可視IMG神「spacer.gif」‥‥。 たとえ大地が消滅(デッドリンク)しても、地中(ディレクトリ)深くに潜み、復活の時を待っているのだ。